人材育成

 社会の国際化、情報化等に伴い、国民ニーズが多様化する中、適切な国土管理、円滑な社会資本の整備及び利活用を進めることが重要となっています。
 このため、河川、道路、環境、防災、構造物維持管理、景観デザイン等をテーマとして、九州地区の大学、工業高等専門学校、団体等を対象とした実践的な人材育成や教育の取り組みを募集しており、令和3年度は、下表の3大学、1法人に助成を行いました。

令和3年度 人材育成決定者一覧表

番号 大学・法人名 人材育成課題名 実施期間
1 九州大学 大学院工学研究院
附属アジア防災研究センター
高速道路維持管理のための実践エンジニアリング教室 令和3年4月12日~
令和4年8月30日
2 九州大学
持続可能な社会のための決断科学センター
九州デザインシャレット2021 in 熊本市
(学生・社会人技術者を対象とした地域密着型デザイン演習)
令和3年4月1日~
令和4年12月31日
3 長崎大学 大学院工学研究科
インフラ長寿命化センター
若手建設業関係者を対象とした道守補助員コースの開催と評価 令和3年5月1日~
令和4年3月31日
4 一般社団法人 九州橋梁・構造工学研究会
運営委員会広報活性化小委員会
九州・山口地区の大学・高専の若手人材ネットワークの育成を目指した道路や橋梁等構造物の維持管理の現状や将来展望に関する実践的な研修会 令和3年10月23日~
令和3年10月23日

令和3年度 人材育成の取り組み概要

①高速道路維持管理のための実践エンジニアリング教室

 大学等教育の拡充に寄与することを目的として、九州大学等の学生を対象に講義および実習等を実施するものであり、NEXCO西日本より、保有技術や高速道路等を建設・管理する際の技術的な課題を“生きた教材”としています。
 『土工工事の概要』『のり面安定計算実習』等の講義(座学)、『路線線形計画の立案』の実習とともに、実際の現場にて具体的な『のり面構造物点検』を行い、点検結果を基にその『対策方法の立案』まで、一連の業務の内容に沿った実習により、専門性の高い技術的な体験・経験ができるカリキュラムとしました。
 参加学生からは、「大学では学べない道路の知識を新たに得ることができて大変役だった。」「 実際ののり面点検方法について学ぶ機会は今までなく、良いきっかけでした。」等の声が聞かれ、全般的に良い評価が得られたと思われます。

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路線線形計画実習
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のり面構造物点検実習

②九州デザインシャレット2021 in 熊本市

 近年、にぎわいづくりや居場所づくり、健康増進、地域防災力向上等の観点から、これまでの概念や制度の枠を超えて、道路、河川、公園、広場等の公共空間を積極的に利活用し、心地よい時間と多様な交流を生み出すことで、都市や地域の価値を高める取り組みが増えています。
 公共空間の計画、設計、施工、運用に携わり、自らの技術力を高めたい学生、社会人を対象として、公共空間の特性を、毎回の講義やグループワークで得た知見等を活かしながら多面的なアプローチで読み解き、読み取った空間特性の全体像をわかりやすく表現する機会を設けています。
 なお、シャレット(charrette)は仏語で「荷馬車」の意味であり、仏の大学生が設計課題の提出日に荷馬車に図面を積んで学校に来る様子から、短期間に集中的に行う演習を意味しており、例年、現地・合宿形式の開催でしたが、令和3年度は新型コロナ感染拡大に鑑み、オンラインでの実施となりました。

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③若手建設業関係者を対象とした道守補助員コースの開催と評価

 インフラの維持管理を適切に行うためには、インフラの異常の早期発見と早期対策が必須であり、インフラの異常に気付く人材が地域に多数いることが必要となります。
 このため、当センターでは、道守養成講座を2008年より開始し、道路の点検・診断・アセットマネジメントができる専門技術者を養成しています。
 若い世代にインフラの維持管理に関心を持ってもらい、活動に参加してもらうことが不可欠であるため、今回、若手建設業関係者を対象として、入門レベルの道守補助員コースを開催し、試行・評価を行い、開催目的を達成できたと自己評価をしています。
 今後、道路異常通報システムによる通報、道路見守り活動への参加、技術者を対象とした道守補コースの受講等に結び付いていくか等を追跡調査する予定です。
 現在、建設業では、新規就職者が就職3年以内に離職する割合が40%に達しており、当講座が新規就職者に土木の仕事のやりがいを伝える役割を果たすことを期待しています。

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道路異常通報システムの演習
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橋梁現場実習の様子

④九州・山口地区の大学・高専の若手人材ネットワークの育成を目指した道路や橋梁等構造物の維持管理の現状や将来展望に関する実践的な研修会

 今回、16回目を迎えた当研修会は、令和3年10月23日(土)、コロナ禍を鑑みてオンライン開催され、就職活動を控える学部生、修士学生、高専生を対象としています。
 道路や橋梁をはじめとした社会基盤設備の重要性・現状・今後の展望について、ゼネコン、橋梁メーカー、建設コンサルタント、電力、鉄道、官公庁などで活躍する若手・中堅技術者の講演を柱の一つとしており、これから社会へ羽ばたく学生へのメッセージをメインテーマとしています。
 今回は、計6名の講師に登壇頂き、各業界の魅力やこれまでの仕事内容の他、1日のタイムスケジュール、自身のモチベーション変化やその業界を選んだ理由等も講演頂きました。
 また、事前アンケートを基に、今後の土木技術者に求められる力やコロナ禍による仕事の変化などをテーマとしたパネルディスカッションも開催しました。

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中継会場の全景
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オンライン画面の様子