九州土木遺産調査研究

 本事業は、若い土木技術者達をはじめとした関係者が土木の仕事に誇りを持ち、土木への志を奮い起こさせ、土木技術の啓発・継承や継続的な人材育成に役立てるための調査研究です。 先人達が時代の技術や知恵を集結し、次世代のために築造した歴史的な土木施設に光を当て、地域の貴重な土木遺産(259箇所)として、観光、地域振興に活用することを目的に、平成17年度より当協会ホームページにおいて「土木遺産in九州」を一般公開してきました。
 令和3年度は、昨年度に引き続き、更なる土木遺産の活用策検討とともに、北九州地区の土木遺産関連冊子の作成・配布を行いました。

土木遺産の活用策検討

1.検討の目的・概要

 本検討は、土木遺産活用により地域活性化を促すため、指定済みの九州管内の土木遺産の活用とあらたな土木遺産の発掘を目的としており、令和3年度は、土木遺産の利活用策について、専門家によるワーキングにおいて検討を行ない、その結果を委員会に諮り、今後の方向性や展開のあり方等を取りまとめました。

2.令和3年度の検討内容

(1)土木遺産の利活用策

地域に溶けこむ土木遺産の重要性を伝える利活用策として「土木遺産な旅のススメ(つくり方編)」(以下、旅のつくり方編という。)及び内外や次世代に伝える「土木遺産な旅ノート」(以下、旅ノートという。)を右記の枠組みにに基づき作成しました。

(2)試行エリアにおける土木遺産の活用検討

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国道3号薩摩街道モデルツアー

福岡県南部~熊本県北部の「国道3号薩摩街道」を対象に、過去2か年間の文献調査、現地調査結果に基づくモデルルートの企画・検討を行い、実用性等の確認を目的とするツアーを実施しました。

(3)土木遺産活用策検討の進め方

①ワーキング

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ワーキングの開催状況

土木遺産活用策の検討にあたり、各専門分野の立場から土木遺産の活用に向けた調査や地域活性化の取り組み、利活用策等について検討する場としてワーキングを開催しました。

【開催日時】
第1回:令和3年7月21日
第2回(モデルツアー):令和3年11月1日~2日
第3回:令和4年1月26日

②検討委員会

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検討委員会の開催状況

 ワーキングでの検討結果を踏まえ、土木遺産活用に向けての新たな方向性や展開のあり方を取りまとめる場として委員会を開催しました。

【開催日時】
令和4年2月24日

北九州地区の土木遺産関連冊子

 九州各地における土木遺産の魅力を内外に紹介する手段として、案内冊子を作成しています。
 令和3年11月30日~12月1日の九州内の道路の清掃・美化活動等を担うボランティア団体が一同に集う 「みちづくしin北九州」において、北九州地区の土木遺産を紹介する現地ゆかりの人物をガイドに仕立てたユニークな冊子を参加者へ配布しました。
 この冊子は、数回の現地調査を踏まえ、リアリティに富んだ次の3編構成となっています。

(1)門司港・関門・下関編

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 剣の使い手であった『宮本武蔵』を案内人とし、①門司港エリアの売りは、「大正ロマン」となる「門司港レトロ地区」の洋館群であり、②関門エリアでは、当時の我が国の土木技術の英知を結集した「関門国道トンネル」や「関門橋」の苦労話がメインとなっています。
 また、③下関エリアでは、赤間神宮や巌流島、更には下関の洋館等も訪ねています。

(2)遠賀川と若松編

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 北九州で石炭荷役をする沖仲仕の『ごんぞう』を案内人とし、①若松エリアでは、石炭の積出港として栄えた若松港の「若松港築港関連施設群」や我が国の海上架橋技術を生んだ「若戸大橋」、さらには沈埋トンネルの「若戸トンネル」を紹介しています。
 また、②折尾エリアでは、明治以降、石炭輸送の中継地として発展した「折尾駅舎」などがあります。③中間エリアでは、江戸時代はかんがい水路として、明治時代は石炭を運んだ小舟「川ひらた」の輸送路となった「堀川(運河)」を紹介しています。

(3)長崎街道編

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 江戸時代の測量家である『伊能忠敬』を案内人とし、小倉城下から木屋瀬宿までの長崎街道をたどっています。①小倉エリアでは、九州の各街道のスタート地点となった常盤橋や小倉城など、②黒崎エリアでは、当時の陸・海路の要所となった黒崎宿場の様子など、③木屋瀬エリアでは、筑前六宿の1つで遠賀川の水運で栄えた木屋瀬宿の様子などを紹介しています。