九州防災エキスパート会支援事業

 九州防災エキスパート会は、九州地方整備局のOBで組織している災害支援のボランティア団体です。
 これまで培ってきた防災の知識・技術を生かして、災害時においては、現場に出動し復旧工法の指導などを行うとともに、平常時においては、九州地方整備局の各事務所が実施する出水期前の点検や訓練等での助言などの他、各種の技術支援や防災以外の技術伝承に係る活動にも取り組んでいます。
 令和3年度は、31名の新会員が加わり、令和4年3月末現在の会員数は437名となっています。

1.令和3年8月災害等の出動

 8月11日から19日にかけて前線が九州付近に停滞し、特に14日は九州北部で大雨が降り、長崎・佐賀・福岡の各県に大雨特別警報が発表されました。
 また、線状降水帯の発生を知らせる「顕著な大雨に関する情報」も九州北部を中心に発表されました。
 この期間の降水量は、雲仙岳:1,291.5mmの他、九州北部の多地点で1,000mm以上の雨量を記録しました。

線状降水帯状況

アメダス総降水量の分布図 ※ 福岡管区気象台HPより

①筑後川支援

 8月14日、筑後川支川の城原川堤防裏法の一部崩壊が発生し、出動要請を受けて対策工の助言等を行うとともに、21日には、同現地に出動して原因調査等を実施しました。

事務所活動状況
現場出動状況

②武雄(六角川)支援

 8月11日から降り続く大雨に見舞われ、14日早朝より出動要請があり、(武雄)事務所と武雄市役所に出動しました。
 6時30分頃、六角川29K付近の左岸堤防から溢水し、1,000mmを超える長期間の降雨と潮汐の影響を受け、令和元年を超える内水被害が発生しました。

六角川溢水状況
武雄市役所へ出動

③長崎支援

 8月11日から降り続く大雨により、長崎では13日~18日間において、延べ8箇所で道路被害に係る助言等を行いました。

③-1: 南島原地区(R57号)

 8月15日午前、法面崩壊の応急復旧現場において大型土嚢等の追加を提案しました。

③-2 : 長崎市中里町地区(R34号)

 8月18日午後、歩道部陥没現場において現地調査を実施しました。民地側側溝と5m下の道路横断水路を接続する縦断水路の損傷に伴い、吸い出しによる空洞が発生しましたが、車道部への支障は確認されませんでした。 

南島原(R57号) 状況
長崎市(R34号)状況

④大分支援

 被災により8月12日から全面通行止めの九重町野上と日田市赤岩のR210の現地調査を行い、片側交互通行を実施しても支障ない旨の助言を行いました。

九重町野上地先(R210号)
日田市赤岩地先(R210号)

⑤台風14号豪雨災害における宮崎支援

 9月16日、台風14号接近に伴う豪雨により、国道220号宮崎市内海(小内海駅付近)において斜面崩壊が発生したため、現地調査や応急復旧工法の確認等を行いました。

応急復旧工事状況
砂岩層と崩落した泥岩層

2.平常時の活動(技術支援を含む)

①河川堤防決壊シミュレーション

 洪水時(地震時)の堤防決壊を想定し、現場条件を踏まえた対策工法検討等の応急復旧訓練に参加し、助言や意見交換を行いました。

大分、宮崎等5事務所

大分 実施状況
宮崎 実施状況

②道路法面点検

 梅雨期(台風期)に備え、被害が想定される個所や地元要望個所等を各出張所で抽出し、事務所と合同点検を行い、助言や意見交換を行いました。

佐国、熊本等7事務所

佐賀国道 実施状況
熊本 実施状況

③道路徒歩巡回

 事務所職員と防災エキスパート会員が道路管理施設の異常や不法占用物件等について合同点検を行い、職員のスキルアップを図っています。

福国、北国等3事務所

福岡国道 実施状況
北九州国道 実施状況

④大規模津波防災訓練

 令和3年10月30日、大分県津久見市において、大規模津波防災訓練が行われ、佐伯事務所の指示のもと以下の訓練を実施しました。

⑤筑後川7出張所の水防備蓄資材調査

 堤防側帯において、土砂、根固ブロック、連接ブロックの他、現場発生のコンクリート製品等が多種備蓄されていましたが、破損品も見られたため、水防備蓄か工事用かを含め、適切な管理が必要との助言を行いました。

⑥大分i-con活動

 令和4年1月のi-con推進活動会議に先立つ11月、地盤改良工の現場見学会が実施され、令和4年1月のi-con大分セミナーでは、防災エキスパート会より助言等を行いました。

現場見学会
推進活動会議
i-conセミナー

3.技術伝承に係るサポート活動

①武雄河川技術サポート

 令和3年8月出水を踏まえた流域治水対策について、「六角川流域治水協議会」を控え、地元からの外水・内水対策のあり方への意見等も踏まえながら、協議会へ提示する対策案などについて積極的な意見交換を行いました。

②立野ダム技術サポート

 現在、立野ダムは本体工事の最盛期を迎え、柱状工法によるコンクリート打設中の状況にあり、工事事故が頻発していることから、工事の安全管理について助言を求められ、意見交換を行いました。

③北九州国道技術サポート

 八木山バイパスの防災個所の合同点検において、カルテ点検箇所のうち、特に今後、対策等の判断が必要な個所について、若手技術職員を対象とした実施点検を行い、意見交換を行いました。

④長崎道路技術サポート

 コンクリートの耐久性向上には、打設プロセスの確認と施工後の表層目視評価が重要となるため、事務所の若手技術職員を対象とした現場実践により、コンクリート打設の技術力向上の支援活動を行いました。